第183回通常国会 災害対策特別委員会 平成25年6月7日
○林久美子君 ありがとうございます。民主党の林久美子でございます。
参考人の先生方、今日はお忙しい中、こうしてお越しをいただいて、大変に有意義な御意見をお聞かせをいただきまして、どうもありがとうございました。
時間も限られておりますので、早速先生方に御質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
先生方にとってはもう釈迦に説法で恐縮でございますが、今回の質問をさせていただくに当たって、東日本大震災におけるお亡くなりになられた方の状況を改めて確認をさせていただいてまいりました。
その結果、東日本大震災では、岩手、宮城、福島の被災三県でお亡くなりになった方のうち、先ほどもお年寄りと障害をお持ちの方のお話が出ましたけれども、六十五歳以上の方が五六・一三%、また障害のある方の死亡率は一・四三%で、全体の死亡率〇・七八%のおよそ二倍ということになっています。つまり、お年寄りや障害のある方がやはり多く犠牲になられたということかと思います。
避難に必要な情報が届かなかったとか、あるいは避難すべきかどうか判断できなかった、さらには介助をしてくださっている方も老老介護の状況で二人で逃げるだけの力がなかったとか、いろんな要因があったかと思うんですけれども、今回の法改正によって、こうしたお年寄りとか障害のある方とか弱い立場にある方たちがしっかりと、もちろん健康な方も含めてですが、救われるのかどうか、非常にこれは重要なことだと思います。
今回、法改正によって、こういう高齢者や障害のある皆さんを始めとする避難行動要支援者あるいは要配慮者について市町村に名簿の作成義務を課して、そのために、先ほども先生方からお話がありましたが、個人情報保護というのがある意味では見えない大きなハードルになっていたものですから、それについても目的外の利用も認めることとしておりますし、御本人の同意を得た上で慎重に消防機関や警察、民生委員などの関係者の方に名簿を提供することができるというふうにもなるわけでございます。
しかし、実は既に平成十八年に災害時要援護者の避難支援ガイドラインというのができていて、市町村に対しては、全体的な避難支援プランと要援護者一人一人に対する個別計画を策定するように国はこれまで既に求めてきたわけでございますし、情報の共有化ということも、福祉部局が持っている情報を例えば防災部局とかと共有するようにということも提唱をしてきているわけです。
にもかかわらず、現在、例えば個別計画の策定状況で見ると、個別計画を策定しているというところはまだ二八・八%、未着手が一二・三%もあるということでございます。そうした状況を見ると、今回法律ができてそれはそれで非常に重要なことだと思うんですけれども、いかにこれが本当にちゃんと機能するのかということに全てが懸かっているんだろうと思います。
そうした点において、いかにしてこうした実効性を、いざというときに動ける状態を担保するべきなのか、まずは室崎先生に御意見を伺いたいと思います。
○参考人(室崎益輝君) まず、大きく二点お答えをしたいと思うんですね。一つは、今御質問は多分やっぱり今までもそういう避難者のガイドラインが出ているのにどうして十分進んでいないのかと。その一点は、やはり個人情報の考え方が非常に狭く考え過ぎていて、現場サイドに行くとなかなかその情報が出てこないという実態があったと。それはとても大きいと思うんです。ですから、その点につきましては、今回の改正で相当改善をされるのではないかという、まさにその個人情報と避難との関係が明確にされましたので、これに基づいて進むのではないかというふうに思っています。
それからもう一点は、これはやっぱり我が事として地域コミュニティーが一人一人のお年寄りに手を差し伸べるという仕組みがないといけない。行政が何か上からこのお年寄りなり要援護者の計画を作りなさいということではなくて、コミュニティー単位で、誰が誰を誰と一緒にどう行くのかというような非常に個別性、具体性を持った計画にまでしていかないといけないというふうに思っていて、そこの取組がやっぱり今まではそれ不十分であった。
今回の改正でいうと、地区防災計画という中身がよく分からないところもあるんですけれども、でも今までのやっぱり行政単位の防災計画じゃなくて、もう少し小学校単位だとかコミュニティー単位でもう少し細かく作りなさいと。これは地元の発意で作りなさいという形になっていますので、そのプロセスの中で、僕は、コミュニティー単位で、誰が誰を一緒に逃がすのか、どうするのかということをやっぱり具体的に考える中で、やはりもう少しリアリティーのある問題として、切実な問題として受け止めていただいて進むのではないか。ただ、それを単に、じゃ、今度はコミュニティーに押し付けてはいけないので、それを行政が後ろから上手に後押しをするという関係をどうつくるかということだろうというふうに思っています。
ちょっとお答えになったかどうか分かりませんが、以上でございます。
○林久美子君 ありがとうございました。
では次に、斎藤先生にお伺いをさせていただきたいと思うんですけれども、実際に今お話がございましたが、地域のコミュニティーが大事だということですけれども、例えば夜、夜中に大きな災害が発生をして、例えば耳の聞こえない方がお一人でお暮らしになっていて、家に鍵を掛けて寝ていらっしゃったと。じゃ、その人たちをどうやって助けに行くのかと。じゃ、誰かがピンポン鳴らしても、耳が聞こえなかったら気が付かないし、寝ていたら目が覚めないかもしれない。じゃ、日ごろから誰かが鍵を持っていて鍵を開けるのかどうかみたいな話も含めて、実際に人を助けようと思ったときにどう動くのかというのは、非常に実は難しいんだというふうに私は思っています。
実際に今も、先ほどの名簿の話ありますけれども、今回もいろんな方に御本人の同意を得た上で配れるようになっていますが、ちょっと調べてみると、既に今九四・九%が民生委員の方なんかには名簿を渡しているわけですね。しかし、もう御存じのように、民生委員さんもいろいろ日常やらなきゃいけないことに忙殺をされていて、割とお年を召された方も多いですし、そういう中で、じゃ、どうやってそういう人たちを連れて逃げるのかと。
そこで、先ほど斎藤先生もおっしゃっていましたけれども、例えば名簿も官民で共有したらどうだみたいなお話もありましたが、ここで例えば運送会社の方であれば、地域に物を配っていらっしゃって、非常にどこにどういう方が住んでいらっしゃるかよく御存じかもしれない。まさに官民連携で具体的なアクションを起こすときにも大きな力を発揮いただけるのではないかと思いますけれども、その辺りについてのお考えをお聞かせいただければと思います。
○参考人(斎藤仁君) 官民連携、確かに大事ですし、神戸の地震の例ですと、人を助けた方の九割以上は民間人によって助けられていると。それもコミュニティーが日ごろ見守っていたコミュニティーほどそういったことが自発的に行われていたということは、我が国にとってそういったコミュニティーの一体というのは大事だと思っております。
ただ、都市部ですと、もちろん地方もそうでしょうけど、都市部ですとなかなか隣近所が何をやっている人かというのが分からないというような問題もございます。そういったところを引き続き改善する必要があるのかなということは考えております。その中で、例えばICTの中で、最近はフェイスブックとかいろんな結ぶ手段がございますので、そういうバーチャルなコミュニティーの中でうまくそういった人たちを取り込めるような取組というのが逆に都市部ほど必要なのかなというふうに思っております。
それから、長くなりますが、帰宅困難の問題で、例えば企業に三日とどまれと言っても、お子様が保育所でありますとか学校に預けておりますと、やっぱり子供が心配で帰らなければという人がたくさんいます。それで、そういったときは、学校単位あるいは保育所単位でそういった情報をうまく働いている方と共有できるというような仕組みというのもやらないと、ただ企業に三日とどまるようにと言ってもなかなかうまくいかないと。そういったような連携というのは今後必要ではないかと思っております。
お答えになったかどうか分かりませんが、よろしくお願いします。
○林久美子君 ありがとうございました。
それでは次に、亀山参考人にお聞かせをいただきたいと思います。
まず、本当に被災地で大きなお力を発揮いただいて、今まさに復興に全力を尽くしていただいているということに改めて感謝を申し上げたいと思います。大変な想像を絶する御苦労の中で日夜業務に当たっていらっしゃるのではないかとお察しをいたします。
その中で、先ほども幾つか自治体のトップとして取り組まれているお話聞かせていただいたんですが、その中でちょっと是非教えていただきたいのが、避難路のお話がありました。東日本大震災以降、例えば学校を新たに耐震化するとか建て直すとかいうときにも、避難路の話は割とセットできちっとしていこうということで今やりつつあるかと思うんですが、実際に今現地でこの避難路の整備は進んでいるという実感がおありなのか。逆にないとすれば、どの部分がハードルになっていて、国はどういう具体的な制度改正をすべきだとお考えでいらっしゃるのか、お話をお聞かせいただければと思います。
○参考人(亀山紘君) 避難路については、実際にはやっと今回の六月の補正で道路整備をすると、避難路を、今ある避難道路を、避難道路というか、道路を避難路にするために改修工事、それの予算化がこの六月の定例議会で提案するという状況にありますので、避難路の整備、確保についてはこれからでございます。
それから、これまで沿岸部で、石巻の場合には海岸沿いに、東西に走る道路は整備されていたんですけれども、今回の津波を、災害を通して、やはり内陸部に逃げる道路を整備していかなきゃいけないと、南北道路の整備が重要な今後の避難道路に位置付けておりますけれども、なかなか財政的な支援がまだ、復興庁からの理解がまだ得られていないという状況にありますので、どうしても私どもとしてはこの避難道路の確保をするために引き続き要望していきたいというふうに考えております。少しずつ、今までどうしても、復興庁の場合には住宅の再建がどうしても最優先ということで、それは私どもも分かっておりますので、今後は、少しずつフェーズが動いてきていますので、やはり避難道路の確保のために財政的な支援を求めていきたいというふうに考えております。
○林久美子君 ありがとうございました。財政的な支援ということでございますので、これは与野党を超えてしっかりと取り組ませていただければと思います。
では最後に、磯辺参考人にお聞かせをいただきたいと思います。
先ほど、復興の陰で、そのときに、災害で助かった命が災害の後でこれだけ奪われる国が先進国と言えるのだろうかというようなお話がございました。先生がお書きになられた記事の中で、お姉様が被災地から引っ越されて、最初喜んでいらっしゃったけど、その震災のことを話す相手がいなくなって自ら命を絶ってしまわれたというような記事も拝読をさせていただきました。
ここには、御本人が動きたいという意思が最初働いたり、いろんなことがあったんだと思うんですけど、寄り添いましょうとか、みんなできずなを深めましょうとかいうことは言えるんですけれども、じゃ実際にどういう立場の人をどういうふうに被災者の方に寄り添っていただくようにすればいいのかという、非常にちょっとふわっとした質問で申し訳ないんですけれども、何か御示唆をいただけると有り難いと思います。
○参考人(磯辺康子君) ありがとうございます。
今回の東日本大震災でも阪神・淡路大震災でも、やはり民間の力というかボランティアの力というのは非常に大きなものがあったと思います。そういう人たちが自ら課題をどんどん発見していって、被災者の方に、自ら考えながら、こう寄り添ったらいいんじゃないかとか、こういう方法なら何かつながりが生まれるんじゃないかとか、そういうことを知恵をどんどん出し合ってやってきたということはございますし、それはこの十八年間、大変進んできたとは思います。
けれども、ボランティアというような、そういう形式張ったというか、そういう形ではなくても、今回、東日本から兵庫県にも多くの方が避難してきていらっしゃいますけれども、ボランティアというよりは一緒の地域の住民ですよねという形で、一緒にこの地域で過ごしていきましょうというような形で、かなりおせっかいな感じで声を掛けたり、そういうことをしていらっしゃる団体もたくさんあります。そういう人の輪というのは非常に被災者を救っているなというのが実感です。
一つ申し上げたいのは、やはり被災者の心情というのは大変揺れます。あるときは、もう住宅再建するぞという非常に前向きな気持ちを持っていらっしゃっても、その二年後にはやっぱり無理だと非常に落ち込んだり、五年、十年、その流れの中で大変気持ちが変わっていかれます。その気持ちをただ横で寄り添って受け止めるという、そういうことだけでも随分被災者の心が軽くなるんだなというのがこれまでいろんな方と接してきて思うところです。
○林久美子君 ありがとうございました。